茂木健一郎さんの「質問力」を読んだ

茂木健一郎さんの「質問力」を読んだ

# 興味深かったエピソード

茂木健一郎さんのもとに受験関連の質問がよく寄せられるという。
偏差値重視の「受験」というものが、どれだけ子どもたちの負担になっているかが見えるので、憤りを感じておられるそう。

以下の質問をされたという。

「大学受験に落ちてしまいました。浪人する気がありません。でも科学者になりたいと思っています。大学に行かなくても科学者になる方法はありますか?」

この質問に対してのアプローチが俊逸だなと感じた。

この質問をした人の中核にある気持ちは、次のようなものではないだろうか
「大学受験に疲れてしまった。今はもう努力する気になれない」

本当は「大学に行かなくても科学者になる方法」が聞きたいのではなく、「どうしたらもう一度勇気を振り絞って困難に立ち向かっていけますか?」ということが聞きたいのではないか?

自分で自分自身の中核にある感情に気が付いて、このように質問することができたなら、「ああ、今は疲れているのだな。少し休むことが先決だ」という解が出てくるはず。

質問することは、正しい答えを得ることではなくて、質問する人が、自分で質問をしたことによって、気づきを得ること。その意味で、質問力はカウンセリング力でもある。

# いい質問、悪い質問

いい質問ができないのは、知識が足りないからではなく、質問内容がナイーブ(単純で未熟)だから。正解を他人に求める質問は、悪い質問の典型。

以下の例がおもしろい。

自分のこどもが受験に落ちて帰ってきた時、真っ先に言うべきことは、「これからどうするつもりなの?浪人するの?」ではない。「よく頑張ったわね。大丈夫?とりあえずゆっくり休んでね」という相手を思いやる言葉であるべき。相手を思いやる質問よりも自分の都合を優先させる質問をして、安全基地を奪っている人は意外と多い。

安全基地とは、イギリス人のジョン・ボウルビィという精神科医が提案した概念。人間が(つまりは大人でも)、自由に世界を探索するためには、「これがあれば自分は大丈夫」という安全基地が必要。

反対に、人を自由にする質問がいい質問。

以下の例もおもしろい。

いきなり「経営するうえで一番大切なことはなんですか?」と聞くのもストレートすぎる。人と人が出会った最初に、自分にとって一番大切なことを話すとは思えない。

これはやってしまったことがある。質問される側の人の気持ちをあまり考えていなかったかもしれない。

# いい質問をするためにどのような試行錯誤を行うべきか?

## 相手の言動を冷静に分析してみる

「まったく共感できない。嫌いだ!」と拒絶してしまう。共感できないと、「相手のことが理解できない」と思ってしまうのは、非常に危険なことです。理解できる他者がほんの少ししかいなくなってしまうからです。
世界には、違う国の人、違う宗教の人、違う考え方の人がいて、そちらのほうが圧倒的多いのです。自分と似ていなければ理解できないとしたら、ほんの一握りの人のことしか知ることができません。
共感できない相手に対しては、いったん自分と切り離して、「この人はなぜこういう言動をとっているのだろう」と冷静に分析して理解する必要があります。「他人に優しい」というのは、結局、冷静な分析を積み重ねていくことでなれるものです。

こういう態度をとってしまいがちな私としては、耳が痛い。
あつくなってしまうしまう前に一歩引いてみる態度を取るべきだというのは納得感のある話。

## マインドフルネス

マインドフルネスでは、ただ起こっていることに「気づく」だけに留めて、一切「いい」「悪い」の判断を挟まないようにする。
人はストレスにさらされると、「どうしてこうなってしまったのか?」とそればかり考えて、身動きが取れなくなりがちです。そればかりに執着してしまうから、不幸になってしまう。
マインドフルネスでは、世界には複数の文脈があることに自然に気づき、一つのことにこだわらなくなって、受け流す力がついていく。
簡単に判断を挟まないことによって、いろいろな状態があることがわかるようになる。それで人の気持ちを推論する時役に立つ情報を記憶に蓄えることもできるし、発見もしやすくなる。すぐに判断をしないことによって、脳の中の体験値が上がる。

## 自意識を切り離し、無意識に問いかける

自分の生活を本当に変えたいと思ったら、問題をありのままに認識することが必要。自分の「本当の問題」を知りたいと思ったら、意識に邪魔をさせない方がいい。
無意識はすでに答えを知っている。だからこそ、それを「なかったこと」にしようと合理化するのではなく、自覚するように努める。

## 強化学習

脳が一番喜ぶ時は、自分には「絶対にできない」と思っていたことが、できるようになるとき。
脳が嬉しかったことをまたやってみようとする、この性質を「強化学習」と呼ぶ。
自分にとっては少し難しく、できるかどうかが分からないギリギリなこと、少し新しさがあることに挑戦してうまくいけば、強化学習がおこる。

## 別のことをしてみる

「今日はもうできない」と思ったら寝てしまうのもオーケー。散歩に出てしまうのもアリ。とにかく行動のレパートリーを増やそう。
「これだけはやらなければならない」そう思って、疲労したり行き詰まったりしているのに、そこから移動しないで、「ああできないなあ。俺ってダメな人間だなあ」と、ウダウダしているのは本当にもったいないこと。それだったら、パッと体を休めたり別のことをする。 一つのことが止まってしまったとしたら、それはたくさんあるうちの一つが止まってしまったにすぎない。
「次は何をしようか?」と質問を切り替えてみる。色々なところを巡ってきたら、また元の課題に取り組むことができるようになる。
行き詰まりというのは、一つのことをやりすぎて、頭にたまったいろいろなものを整理したいという「脳の欲求」である。

# 仕事でよくあるシチュエーション

原因を究明するときの質問。
失敗した原因をきちんと分析し、次に活かすためには、いい質問が必要。
まず絶対にしてはいけない質問がある。「誰のせいでこんなことになったのか?」誰が悪いと決まったら問題は解決するのだろうか?
前向きを論理を展開するためには、「どのあたりからうまくいかなくなったか?」と質問してみる。
うまくいかないときは、なんとなく途中で「これでいいのかな?」という不安や心配がよぎったりするもの。本当はその違和感に気づくことができれば、軌道修正できたはずだが、なぜか見過ごされてしまった。
「これでいいのかな?」と思ったところに、うまくいかない原因が存在している可能性が大きいので、次回から気づけるように、この点を反省しておくことが大事。
「なぜそれをとめることができなかったのだろうか?」と質問するのも良い。本当は「いいことにならない」と分かっているのに、惰性で続けてしまったことが原因で失敗してしまうことはよくある。